ラッキングは、ザックやバックパックに適切な重りを入れて歩くことで、通常のウォーキングよりも全身の筋力や心肺機能を強化するエクササイズです。
軍隊の行軍訓練として長らく活用されてきた歴史があり、最近ではフィットネスやリハビリ、シニアの健康維持プログラムにも応用されています。
目次
ラッキングの主なメリット
- 筋力・持久力の同時強化
- 骨密度アップによる骨折予防
- 心肺機能の向上(VO₂maxの改善)
- 姿勢改善と体幹安定性の向上
- 日常動作でのエネルギー消費量増加
始め方:重り選びと正しいフォーム
- 重りの目安
- 体重の5~10%からスタート。慣れたら週ごとに2~5%ずつ増量します。
- 重りの入れ方
- バックパック内側に重心を寄せる(腰骨の高さに固定)
- 前後の偏りを避け、背中全体で均等に負荷を受ける
- フォームのポイント
- 胸を張り、顎を軽く引いたニュートラルな姿勢
- 肩甲骨を軽く寄せて、腰で重さを支えるイメージ
- 歩幅は通常の80~90%程度に抑え、着地はかかとから
初心者向けラッキングプラン(4週間)
週 | 回数/週 | 時間/回 | 重量(体重比) | 速さの目安(RPE) | ポイント |
---|---|---|---|---|---|
1週目 | 2〜3日 | 15分 | 5% | 2〜3(余裕あり) | フォーム確認と筋肉痛チェック |
2週目 | 3日 | 20分 | 7% | 3 | 疲れない範囲でゆったりペース |
3週目 | 3〜4日 | 25分 | 8〜9% | 3〜4 | 速歩区間(2分)×ゆったり(3分)を1〜2セット追加 |
4週目 | 4日 | 30分 | 10% | 4 | 終了後は必ずストレッチと深呼吸 |
注意点と安全対策
- 医師の許可を得てから開始する
- 初回は必ず軽めの重量と短時間でトライ
- 疲労や痛みが続く場合は直ちに中止し、休息日を設ける
- 坂道や段差が多いルートは慣れてから挑戦
- 水分補給と適切なシューズ選びを徹底する
おすすめギア
- バックパック
- 体幹にフィットするチェストベルト付き
- 重り
- プレート型ウェイト(1kg×数枚)
- ダンベル型ウェイト(ポーチに入れてもOK)
- ウォーキングシューズ
- クッション性と安定性を重視
- 活動量計/心拍計
- 目安心拍数(60~70%HRmax)をチェック
ラッキング後のリカバリー法
最も大切なのは「クールダウン+栄養補給+休息」で筋疲労を最小限に抑え、回復を促すことです。
1. クールダウン(動的ストレッチ/ウォーキング)
- 活動を終えたらすぐに歩行ペースを落とし、5~10分の軽いウォーキング
- 股関節・膝・足首をゆっくり動かす動的ストレッチで関節の可動域を整える
2. フォームローリング(筋膜リリース)
- 大腿四頭筋、ハムストリングス、ふくらはぎ、臀部を中心に各部30~60秒
- 圧痛点(トリガーポイント)を見つけたら軽く上下に転がして筋肉をほぐす
3. 静的ストレッチ(下半身中心)
部位 | ポーズ例 | キープ時間 |
---|---|---|
ハムストリングス | 座って片脚を伸ばし、つま先を手前に | 30秒×左右 |
大腿四頭筋 | 立位で片脚を後ろに引き、足首をつかむ | 30秒×左右 |
臀部 | 仰向けで片脚を反対脚にクロス | 30秒×左右 |
ふくらはぎ | 壁に手をつき、かかとを床に押し付ける | 30秒×左右 |
4. 水分・電解質補給
- 運動後30分以内に500~700mlの水分を少量ずつ補給
- スポーツドリンクや塩タブレットでナトリウム、マグネシウムも補充
5. タンパク質+炭水化物の食事
- 運動後1時間以内に、炭水化物(グリコーゲン回復)とタンパク質(筋修復)を1:1〜3:1比で摂取
- 例)サンドイッチ(ターキー&野菜)+バナナ、ヨーグルト+はちみつ
6. 睡眠と休息
- 就寝前のストレッチ+深呼吸で自律神経を整える
- 7時間以上の質の高い睡眠を確保し、筋タンパク質合成と成長ホルモン分泌を促進
7. アクティブリカバリー
- 翌日は軽いウォーキングやヨガで血流促進
- 心拍数を最大心拍数の50~60%程度に抑え、筋肉の廃棄物を除去
8. 圧着ウェア・アイシング
- 圧着ソックスやレギンスで下肢の血流を促す
- 強い痛みや浮腫みには、10~15分のアイシング(氷嚢)も効果的
9. マッサージ・セルフケア
- フォームローラー以外にテニスボールで腸腰筋や足底をほぐす
- プロのマッサージやストレッチ整体でピンポイントケア
さらに、週に1回は「デロードデー(軽負荷の日)」を設け、疲労を抜きながらも継続的に体を動かす習慣をつくると、ラッキングの効果を最大化できます。